【会員向け情報】オンライン座談会のお知らせ

2021年度日本教育学会 オンライン座談会 

機関誌改革と教育学研究の課題:学術メディアの役割

【実施日】 2021年6月28日(月) 17時〜19時

【開催方法】Zoom ウェビナー(事前申し込み制、申込締切6月24日)

【申し込み】下記よりお申し込みください。

https://forms.gle/Bf9ahGr7gMh7KPyp6

【企画趣旨】
 研究推進委員会では他の委員会にもご協力いただき、昨年に続きウエッブ座談会を上記タイトルで開催する運びになりました。
 機関誌編集委員会において日本教育学会の機関誌である『教育学研究』誌の改革が進められています。本委員会ではそのことが機関紙の改革にとどまらない、教育学研究全体の在り方を問うものとして受け止め、今回の改革の内容を共有すると同時に、今日の教育学研究の課題を探るという趣旨で本企画を立てました。
 機関誌編集委員会は学会誌としての論文採択率が伸びない状況を問題視し、それを契機としながら抜本的な改革を進めようとしています。具体的には、「新しい教育学の模索と挑戦」と題した特集号の新設、「投稿者に、利益相反関係のない外部査読候補者の希望を聞くこと」など投稿者のイニシアチブを強める投稿方式の導入が掲げられています(「特集案内」『教育学研究』第87-2 号、2020 年6 月)。そこには、専門分化した専門ディシプリンの垣根を越えた新たな価値の創造、また、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを志向する教育学研究自体の刷新の起爆剤との位置づけがなされています。
 こうした背景には、学会そのものが抱えた問題に加えて、学会や機関誌を取り巻く背景があると本委員会では捉えました。教育学諸メディアの多様化、教育を議論する教育学以外の領域や諸メディアの台頭、上記にともなう教育学研究の相対的な位置関係の変化といった教育学を取り巻くメディア環境の状況があり、それと連動しながら教育学のあり方が問われているともいえます。したがって、こうした問題も視野に入れて進行中の教育学研究改革問題を考えていく必要があると考えました。
 編集委員会の「既存の専門学会のディシプリンに完全には適合していない多少荒削りな論文であってもいい」「心からおもしろいと感じ、取り組むのが愉しくなる教育学の創造につながるような論文」とういう指摘はたいへん刺激的で革新的なものです。ただし、新しいものをどうやって評価するか、これまでの評価基準をどのように位置づけるかなど詰めなければならない課題も少なからずあるように思います。上述したように視野を広げながらこうした改革の論点や課題などを深めるための一助となるように今回の座談会を企画しました。

プログラム

編集委員会の趣旨と実態報告

  • 小玉重夫(東京大学・機関誌編集委員会委員長)
  • 広瀬裕子(専修大学・機関誌編集委員会副委員長)

コメンター

学問におけるメディアに関する背景の問題整理(海外情報、歴史と現在の動向)

  • 隠岐さや香(名古屋大学 科学史)

教育学会の既存ディシプリンの側からのコメント

  • 荻原克男 (北海学園大学 教育行政)
  • 辻 智子 (北海道大学 社会教育・青年期教育) 

若手からこのところの新しい動向を含めてのコメント

  • 渡邊真之 (東京大学院博士課程院生 日本教育史・若手育成委員会委員)

司会

  • 木村 元 (一橋大学・研究推進委員会委員長)
  • 堀本麻由子東洋大学・研究推進委員会委員)

 

登壇者・司会者紹介

編集委員会

小玉 重夫 KODAMA Shigeo
東京大学 大学院教育学研究科 教授
専門:教育哲学、アメリカ教育思想、戦後日本の教育思想史。
教育の公共性を原理的に問い直すことを研究テーマに、ハンナ・アレントの教育思想、シティズンシップ教育、教育政治学にアプローチしている。著書に『教育改革と公共性』(東京大学出版会 1999)、『シティズンシップの教育思想』(白澤社 2003)、『学力幻想』(筑摩書房、2013)『難民と市民の間で』(現代書館 2013)、『教育政治学を拓く 18歳選挙権の時代を見すえて』(勁草書房 2016)など。

広瀬 裕子 HIROSE Hiroko
専修大学 人間科学部 教授
専門:教育行政学、教育政策分析、ジェンダー・セクシュアリティ論
近年は、主としてイギリスをフィールドとして通説的理論枠では把握しにくい教育政策の分析を行いつつ、教育行政学の汎用的な理論枠の構築を模索している。主著に『イギリスの性教育政策史: 自由化の影と国家「介入」』(勁草書房2009)、『カリキュラム・学校・統治の理論: ポスト・グローバル化社会の教育』(編著 世織書房2021 予)など。


コメンテーター

隠岐 さや香 OKI Sayaka
名古屋大学 大学院経済学研究科 教授
門:科学史
東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。博士(学術)。広島大学大学院総合科学研究科准教授を経て、現職。日本学術会議連携会員。著書に『科学アカデミーと「有用な科学」—フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ—』(名古屋大学出版会、2011)、『文系と理系はなぜ分かれたか』(星海社出版、2018)等多数。

辻 智子 TSUJI Tomoko
北海道大学 大学院教育学研究院 准教授
専門:青年期教育論、社会教育、女性史
青年・女性の学習や活動の実践について、その展開過程を歴史的な視点から探究。
著書に『繊維女性労働者の生活記録運動―1950年代サークル運動と若者たちの自己形成』(北海道大学出版会、2015年)など。

荻原克男 OGIWARA Yoshio
北海学園大学 経済学部 教授
専門:教育行政学
戦後日本の教育制度・政策史の研究。1990年代以降の構造改革による教育システムの変容。政策研究における事実/規範問題。教育と政治との関係の再検討。精緻な理論化でもなく,実証が全てでもなく,相互の往復運動からの適切な対象構成のあり方を模索中。『戦後日本の教育行政構造—その形成過程』(勁草書房1996/2006オンデマンド版)

渡邊 真之 WATANABE Masayuki
東京大学 大学院教育学研究科博士課程
日本教育学会若手育成委員会委員
専門:教育学、教育実践史。
1960~1970年代の教育実践・教育運動を歴史的な観点から研究しています。「1960年代の子ども研究における消費の位置ー子ども調査研究所による子ども研究の射程ー」『教育学研究』第88巻第1号、2021年3月。『障害児の共生教育運動』(分担執筆、東京大学出版会、2019年)。

司会

木村 元 KIMURA Hajime
一橋大学 大学院社会学研究科 特任教授
​専門:教育学・教育史
子どもの社会化と人間の自立の様を、「教え―学ぶ」という対象だけではなく、「産み・育てる」など人間形成全体のなかに教育システムを位置づけるために、日本の社会と教育の関係史的な検討を行ってきた。著書に『境界線の学校史』(編著)(東京大学出版会, 2020)、『学校の戦後史』(岩波書店, 2015)、『日本の学校受容』(編著)(勁草書房, 2012)など。

堀本 麻由子 HORIMOTO Mayuko
東洋大学 文学部教育学科 准教授
専門:成人教育、生涯学習論
職場における教育・学習論を専門分野とし、仕事を通じての能力育成を研究テーマとする。
著書・訳書に、『Japanese Women in Leadership』(編著、Palgrave macmillan、2021)、マルカム・ノールズ著『成人学習者とは何か―見過ごされてきた人たち』(共訳、鳳書房、2013)など。