シンポジウム

シンポジウムⅠ 戦争と子ども・教育―戦後70年を教育学としていかに受けとめるか―

司会者 中村雅子(桜美林大学)
米田俊彦(お茶の水女子大学)
報告者 逸見勝亮(北海道大学名誉教授・大学文書館研究員)
芝健介(東京女子大学)
池田美佐子(名古屋商科大学)
指定討論者 駒込武(京都大学)

 日本の敗戦をもって第二次世界大戦が終わり、それから今回の大会が開催される8月で70年となる。日本はこの70年間に戦争の当事者になることはなかったが、冷戦の時期も、冷戦終結後も、世界の各地では戦争、紛争、テロ(以下「戦争」)が繰り返されてきた。現在では世界中を巻き込もうとする戦争が、比較的治安が安定していたはずの地域にも及びつつある。戦争の直接の被害者になるばかりでなく、親や家を失って成長発達するための環境を奪われたり、対立の担い手、当事者に育てられる教育を受けたりするという意味で、子どもは戦争の最大の被害者となりがちである。日本では、戦後しばらく、教育学の世界では平和教育の研究が進められ、あるいは平和教育の実践や運動も広がったが、近年ではそれらに注目が集まることは少なくなり、同時に憲法9条の空文化も進められつつある。

 このシンポジウムでは、上記のことを問題意識とし、日本、ドイツ、エジプトの第二次世界大戦とそれぞれの戦後についての報告をいただいて、戦後70年を経た現時点で戦争と子ども・教育との関係をどのように考えたらよいのかを確認する方向で議論をすすめたい。議論を通して、現代の戦争あるいは戦争と教育・子どもの関係の問題に対しての冷静で客観的な見方が浮かび上がってくることを期待したい。

 

シンポジウムⅡ(公開) 学力に関する量的研究と質的研究の交流可能性を探る

司会者 山田哲也(一橋大学)
冨士原紀絵(お茶の水女子大学)
報告者 耳塚寛明(お茶の水女子大学)
松下佳代(京都大学)
佐藤学(学習院大学)
指定討論者 小玉重夫(東京大学)

 全国学力・学習状況調査をはじめとする各種の学力調査に依拠する実証的な研究により、とりわけ「学力」の格差をめぐる言説が教育界のみならず、社会全体の関心を集めている。お茶の水女子大学でも21世紀COEプログラム以降今日に至るまで、とりわけ教育社会学的なアプローチによる格差研究に積極的に取り組んできた経緯がある。

 教育社会学的なアプローチでは学力調査によって量的に観察される「学力」を、格差を実証するために操作的に位置づけ、そこで観察された「学力」の質そのもの(教育学的意味づけ)に対して踏み込まず、むしろ調査によって観察された「学力」の形成された要因の分析を通じて、現代社会における不平等構造や格差是正の方途の解明に挑み続けている。

 その一方で、教育学研究における「学力」といわれるものの質(意味づけ)についての追究は、とりわけ戦後新教育の学力低下問題を発端として、時代を経ても絶えずなされ続けており、その蓄積は多い。にもかかわらず、そうした「学力」といわれるものの質の議論の蓄積が、今日の「格差」問題の論拠となる「学力」とどこで交わるのかが明確になっているといえるだろうか。質を重視する議論の立場の中には格差に焦点付けた研究の依拠する「学力」の質を問うことを放棄し、むしろグローバル社会を生き抜くための「新たな資質や能力」についての議論を深める方向に進んでいるものも少なくない。

 格差の事実を学術的客観的に観察することと、これからの社会で求められる学力(身につけるべき学力)を学問的に提示することの間には埋めることのできないくらい大きな溝があるかもしれないが、このままでは格差社会に生きる子どもが身につける「学力」といわれるものは多層的となり、子どもにも、教師にも期待し求められるものが大きくなる一方ではないだろうか。

 そこで、今一度、現在問題とされ続けている「学力」に関して、最先端の研究成果をもとに、子どもにとってよりよい「学力」といわれるものの交接点(あるいはせめて交接点がイメージできる方向)を見いだしてゆきたい。

シンポジウムポスター

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