開催概要

課題研究

課題研究Ⅰ: 教師教育の改革動向をどう受け止めるか

2015年12月に出された中教審答申により、近年継続的に進められてきた教師教育改革は、さらに大きな展開を見せている。背景には教員の大量退職や学校をとりまく状況の変化の中で、教員の資質向上が強く求められていることがある。

2015年の答申では、養成・採用・研修の一体的な制度改革が謳われており、その方針に基づいて2016年11月には関連三法が改正された。それにより、国は教員の資質向上に全国で取り組むため指針を策定し、指定都市と都道府県の教育委員会はその指針を参考にしながら地元の教職課程を有する大学を交えて協議会を設置し、教員の経験年数などに応じた指標を作り、研修計画の見直しを図ることとなる。

また、各大学の教職課程のカリキュラムも大幅な科目の変更が求められるとともに、カリキュラム編成の際に参考とする指針(教職課程コアカリキュラム)が作成され、2017年6月頃にとりまとめられる予定である。いずれの施策も、教員の養成と研修の水準の確保を図ることがねらいである。

今回の教師教育改革は、1989年の教育職員免許法の改正や初任者研修の導入に匹敵するものであり、その改革の意味と各方面に与える影響を明らかにする必要がある。また、今回の改革により、教師教育全体に対する国の統制が強化されることとなる。このことは教員養成における開放制の理念の浸食や、教育行政における地方自治の原則への抵触の虞もあり、それらの観点からの検討も必要である。教員(集団)自身の意見が今回の改革にどのように反映されるのかということも、検討の観点として重要だろう。

改革は進行中であるため、今回は最新の情報を共有し、意見交換するという意味合いもある。現在の流れを教育学はどう受け止めればいいのか、また各大学は指標の策定のための協議会への参加や、教育職員免許法の改正や教職課程カリキュラムの統制の強化をどう受け止めるのかについて、各立場からの現状報告や意見交換の場として設定したい。

課題研究Ⅱ: 学力テスト体制と見えない排除

2016年度の課題研究「インクルーシブ教育における包摂と排除」では、2007年の全国学力学習状況調査以降、学校教育の日常がテスト学力の向上を目的として組織される中で、授業にうまくついていけなかったり、一斉授業になじめなかったりする子どもが、特別支援学級へと排除されている状況が報告された。

確かに近年、都道府県・市町村が全国学テの順位を競い、各自治体は学力向上の施策を強化する傾向がある。その中で、学校現場では、テストへの対応を余儀なくされ、結果として民族的マイノリティの子どもや障害をもった子どもを教室内で周辺に位置づけて排除してしまうという、いわば「見えない排除」が進行していると指摘されている。たとえば、2007年7月の朝日新聞の記事では、東京都足立区の区立小学校で、区独自の学力テストの採点から障害のある児童3人が外されたことが報じられている。

そこで、本課題研究では、テスト学力の向上策が強化される公立小中学校の下で、社会的マイノリティの子どもたちがどのように排除されているのかについて、国内の状況を報告してもらった上で、排除をいかに可視化し、さらには克服し得るのか、その可能性について討議を展開したい。

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