日本教育学会・四国地区研究集会 教科専門と教科教育学、教育学との連携のあり方を考える

日本教育学会・四国地区研究集会 ※終了しました

<シンポジウム>
教科専門と教科教育学、教育学との連携のあり方を考える

近年、教員養成系大学・学部には、質の高い教員の養成とそのための教員養成カリキュラムの改革が強く求められています。なかでも、「教員養成系大学・学部における『教科専門科目』のあり方に関する調査」(日本教育大学協会・第二常置委員会、2003 年3月)、「教員養成の『モデル・コア・カリキュラム』の検討(中間まとめ)」(日本教育大学協会「モデル・コア・カリキュラム」研究プロジェクト、 2003年5月)等に示されるように、教員養成教育における教科専門科目の位置づけやその教授内容・方法が厳しく問われています。そこで、四国地区研究集会では、下記のようなシンポジウムを開催し、教科専門と教科教育学、そして教育学との関連および連携のあり方について議論・検討したいと考えます。

主題 教科専門と教科教育学、教育学との連携のあり方を考える
日時 2004年2月1日(日) 14:00~16:30
場所 愛媛大学教育学部 1号館2F大会議室(愛媛県松山市文京町3番)
シンポジスト 三浦 和尚氏(愛媛大学) 松本 康氏(香川大学) 山﨑 洋子氏(鳴門教育大学)
司会 伴野昌弘・岡部美香(愛媛大学)       

お問い合わせ
岡部美香研究室
愛媛県松山市文京町3番 愛媛大学教育学部
TEL・FAX 089-927-8300
E-mail okabeed.ehime-u.ac.jp
(画像の@の部分は半角@にして送信願います)

以上

三浦 和尚氏 教科教育と教科専門の連携の現状と課題

教科専門・教科教育学・教育学の三者の関係を考える時、一般的には教科専門と教育学の間を教科教育が繋ぐといったイメージがある。それは理念としても正しいと思われるが、実際には、三者が良好に関係づけられているわけではない。それは、教科教育が実際には教科専門か教育学かに傾いている、あるいは、教科専門と教育学が向き合えない状態にあるという理由によるのではないか。

本シンポジウムではそういった一般的な状況を確認しつつ、実際の授業や教育実習を中心とした教員養成場面における連携について考察したい。特に、小学校教員養成における「教科に関する科目」については、教科専門と教科教育内容学との関連において、その実践実態が多様であるように思われる。「小学校教科国語」を中心に、そのあり方を仮説的に提言する。

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松本 康氏    香川大学における教科専門・教科教育学・教育学の連携について
-教科教育法関連科目を中心に-

本発表では香川大学教育学部の教員養成カリキュラムにおける連携の状況について、教科教育法関連科目を中心に報告する。香川大学では、授業形態と担当者によって、次の3つのタイプの連携が見られる。

A 単独方式:一人の担当者がひとつの授業を担当し、カリキュラムを構成するもの。
B 分担方式:複数の担当者がひとつの授業を数時間ずつ分担するもの。
C TT方式:複数担当者のTT方式によるもの。

最も多いのはAタイプであり、教科専門担当者が教育法の領域に踏み込む内容もある。各担当者間の連携は比較的弱い。Bタイプの連携では教科専門、教科教育学、教育学、実地指導講師、交流人事による教官、などの組み合わせがある。担当者相互の内容のつきつめは必ずしも十分ではない。Cタイプの連携は生活科や学部共通のコア科目において実現されている。担当者が複数の講座にまたがるため、連絡・調整に手間がかかる。

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山﨑 洋子氏   教育学の立場から「教育内容と教科教育」の連携を考える
―教育的価値に向き合う大学教員と現職院生の授業実践―

「教育内容と教科教育の連携」へのアプローチにおいては、教育内容の特性を理解する必要がある。というのも、教育内容は、細分化と学際化(interdisciplinary) のベクトルをもつ個別諸科学、また「子ども・社会」といったものからの影響を受けており、これらは教育内容の特性として捉えることができるからである。この特性は「本質的非規定性」とでも称することができるが、学校が存在する限り、教育内容は選択と編成を求められる。それゆえ、教科教育は教育内容に方向づけられて成立せざるを得ない。ただ、教育システムの進展した今日、その関係は一方向的ではなくその逆もまた生じているがゆえに、そこには連関のサイクルが作り出される。言い換えれば、教育内容も教科教育も、多重・多層に連関するファクターのなかに位置しているのである。それゆえ、教育内容と教科教育には絶えざる省察が必要とされる。この省察において考慮に入れねばならないのは、言うまでもなく、教育内容と教科教育を根拠づける「教育的価値」であろう。しかし、「教育的価値」といっても、これまた規定しがたく、揺らぎのただなかにある。

本報告では、教員養成の仕事が抱えるこのような問題を念頭におきつつ、報告者の所属講座が試みている大学院の授業実践を紹介し、教科教育と教育内容の連携に向き合うためには、どのような視座が求められるかについて考えたい。