日本教育学会 第79回大会

The 79th Annual Conference of Japanese Educational Research Association

日本教育学会第79回大会実行委員会
(◎委員長 〇事務局長)
◎船寄 俊雄
 渡部 昭男
○渡邊 隆信
 山下 晃一
 山口 悦司
 北野 幸子
 宇賀神 一
 樫下 達也
 川地 亜弥子
近畿地区理事
 岡部 美香 大阪大学
 倉石 一郎 京都大学
 田中 耕治 佛教大学
 西岡 加名恵 京都大学

開催概要

日本教育学会第79回大会のご案内

日本教育学会会員各位

日本教育学会第79回大会実行委員会
委員長 船寄 俊雄


 日本教育学会第79回大会は、2020年8月24日(月)、25日(火)、26日(水)の3日間にわたって、兵庫県神戸市の神戸大学国際人間科学部で開催する予定でした。しかし、この度の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の状況を鑑み、法人理事会と実行委員会において慎重に検討してまいりました結果、集会開催は中止することとなりました。
 神戸大学では昨年7月に実行委員会を立ち上げてから、学会事務局や過去の大会校、関西地区理事をはじめとする会員諸氏のご協力を得て、大会準備を進めてまいりました。しかし、ウィルス感染が国内で急速に拡大し、本年4月7日には政府より緊急事態宣言が発令され、兵庫県が対象地域に指定されました。その後も国内で感染が拡大し続けており、5月上旬時点で終息の見通しが立たない状況です。非常に残念ではありますが、学会員の皆様の健康と安全を第一に考え、本大会はやむを得ず集会開催は中止とし、規模を大幅に縮小してウェブ開催(ウェブ掲載を中心とする開催)とさせていただきます。
 すでに自由研究発表(一般研究発表・テーマ型研究発表)及びラウンドテーブルに発表申込みをしていただいている学会員の方々には、発表機会を確保するために、非常時につき変則的ではありますが、発表要旨をウェブ掲載し、それをもって研究発表とさせていただきます。併せて、会員相互の研究交流のために、Eメールを用いて発表者と質疑応答の機会を設けたいと思います。詳しくは下記の説明をご覧ください。
 公開シンポジウムについては発表要旨に加えて、必要に応じて補足資料もウェブ掲載する予定です。課題研究については、発表要旨の掲載を基本とし、登壇者の希望により補足資料を掲載することも検討します。
 大会と同時に開催しておりました全国理事会と総会につきましては、別途学会事務局から連絡がありますので、ご確認ください。
 大会ホームページ(http://jera79.jp/)は、学会のホームページ(http://www.jera.jp/)にリンクしております。今後の情勢により急な変更が生じる可能性がありますので、こまめにご確認ください。
 本学会創設以来の未曽有の事態となりましたが、会員諸氏のご理解とご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

1.開催日

2020年8月24日(月)、25日(火)、26日(水)
2020 年 8 月 24 日(月)~ 8 月 28 日(金)
『発表要旨集録』を大会ホームページ上で公開し、発表内容に関する質問・意見をEメールで受け付けます。

2.会 場(ウェブ開催

 当初予定しておりました神戸大学国際人間科学部(鶴甲第1キャンパス)(兵庫県神戸市灘区鶴甲1-2-1)での集会開催は中止します。
 発表内容はすべて大会ホームページにアクセスしてご覧ください。

3.実行委員会および連絡先

実行委員会(◎委員長、〇事務局長)
◎船寄俊雄 渡部昭男 ○渡邊隆信 山下晃一 川地亜弥子 山口悦司 北野幸子
 樫下達也 宇賀神一
近畿地区理事:岡部美香 倉石一郎 田中耕治 西岡加名恵

連絡先: 〒657-8501

兵庫県神戸市灘区鶴甲3-11
神戸大学国際人間科学部(鶴甲第2キャンパス)
渡邊隆信研究室内 日本教育学会第79回大会実行委員会事務局

メールアドレス: jera2020@h.kobe-u.ac.jp

4.大会までのスケジュール

自由研究発表(一般研究発表・テーマ型研究発表)の申込締切 6月20日(土)
(延期しました)
ラウンドテーブルの申込締切 6月20日(土)
(延期しました)
『発表要旨集録』閲覧パスワードの送付 7月中旬頃発送予定
『大会プログラム』の閲覧開始 7月10日(金)
『発表要旨集録』掲載原稿の提出締切 7月17日(金)(Web登録)
『発表要旨集録』閲覧開始 8月19日(水)公開予定
発表内容への質問・意見の受付 8月24日(月)~8月28日(金)

*締切日経過後の申し込みと原稿提出は受け付けられません。
*『大会プログラム』及び『発表要旨集録』は大会ホームページ上でのPDFの公開のみとなります。冊子体は作成しません。
*『発表要旨集録』閲覧パスワードは、『教育学研究』の今年度第2号7月中旬頃発行に挟み込む予定です。
自由研究発表とラウンドテーブルへの質問・意見の受付はすべてEメールで行います。宛先は発表者のメールアドレスで、発表者から直接回答をしていただきます。発表者のメールアドレスは『発表要旨集録』閲覧パスワードを用いて『発表要旨集録』と一緒に大会ホームページ上でご覧いただく予定です。

5.大会参加費

無料
*『発表要旨集録』の原稿掲載、閲覧、質問・意見等、大会のウェブ開催に伴うすべての参加費は徴収しません。

6.自由研究発表(一般研究発表およびテーマ型研究発表)

(1)分科会種別と趣旨

 会員による研究発表の場として、例年の大会同様、「A 一般研究発表」と「B テーマ型研究発表」を設定します。いずれについても、研究発表を希望する会員は自由に応募できます。「A 一般研究発表」では、研究領域別の分科会を編成します。「B テーマ型研究発表」では、さまざまな研究課題について焦点化された特定のテーマを設定し、分科会を編成します。

(2)開催予定分科会

 下記の分科会の開催を予定しています。ただし、研究発表の応募状況によっては、分科会の名称変更や再編を行うことがありますので、あらかじめご承知おきください。

【一般研究発表】
A- 1 教育理論・思想・哲学
A- 2 教育史
A- 3 学校制度・経営
A- 4 教育行財政・教育法
A- 5 比較・国際教育
A- 6 教育方法・教育課程
A- 7 生活指導
A- 8 教科教育
A- 9 発達と教育
A-10 技術・職業教育
A-11 幼児教育・保育
A-12 初等・中等教育
A-13 高等教育・中等後教育
A-14 教師教育
A-15 社会教育・生涯学習
A-16 教育心理学
A-17 カウンセリング・教育相談
A-18 特別支援教育・特別ニーズ教育
A-19 図書館・教育情報学

【テーマ型研究発表】
B- 1 市民性教育の課題
B- 2 学校のリアリティと教育改革の課題
B- 3 世界の教育改革動向
B- 4 若者の移行過程変容と学校
B- 5 ジェンダーと教育
B- 6 道徳教育の改革動向
B- 7 教員政策
B- 8 戦後教育史の諸問題
B- 9 教育学の問い直し
B-10 子ども問題と教育・福祉
B-11 東日本大震災と教育学研究
B-12 「知的財産教育学」を構想する
B-13 デジタル時代の教育学
B-14  Educational Issues from Global Perspectives(English Session)
*B-12・13は公募により新設されたテーマです。

(3)発表申込み

 研究発表をご希望の方は、下記大会ウェブサイトの申込みフォームに必要事項をすべて書き込んでください。受付開始は4月1日(水)で、締切は6月20日(日)です。申込みはすべてウェブサイト上で行います。お申込みいただきますと、自動的に受領確認メールがすぐに送信されます。確認メールが届かない場合は、下記メールアドレスにご連絡ください。
  申込み先ウェブサイト:  https://********** (4月1日公開)
  メールアドレス:     jera2020@h.kobe-u.ac.jp
 研究発表においては、口頭発表者(プログラムで○の付く者になれるのは原則として、個人発表と共同発表を合わせて、ひとり一本とします。個人発表を申し込んだ者は、共同発表で口頭発表者になることはできません(口頭発表者にならなければ、共同研究の発表者になることは可能です)。なお、ラウンドテーブルはこの限りではありません(ラウンドテーブルと研究発表の両方に発表申込みをすることは可能です)。

(4)発表資格

 研究を発表することができるのは、①本学会の会員で、6月20日以前に2019年度までの会費を納入済みの会員、または②6月20日までに2020年度の入会申込み手続きをとり、2020年度会費を前納した方、のいずれかに限ります。

(5)発表要旨(『発表要旨集録』の原稿)の提出

 発表を申し込んだ方は、研究発表の「原稿作成要領」(大会ウェブサイトに掲出)にしたがって発表要旨(『発表要旨集録』の原稿PDF2頁分)をWeb登録にてご提出(アップロード)ください。分量オーバーの場合、3頁目以降は掲載されませんので、ご注意ください。提出期間は6月26日(金)から7月17日(金)までです。締切厳守でお願いします。
 『発表要旨集録』に掲載された内容は、科学技術振興機構(JST)の研究情報データベース「JSTAGE」において公開されます。

(6)質疑応答のためのメールアドレス

 大会ホームページの発表申込時に登録していただいた発表申込者(研究代表者)のメールアドレス宛に、学会員から直接、質問・意見を送付していただく予定です。発表者が申込時とは別のメールアドレスで学会員からの質問・意見を受けることを希望する場合は、7月17日までに、次の宛先にご連絡ください。
   jera79@*****.jp

(7)発表申込みの取り消し

 すでに発表申込みを済まされた会員のなかで、集会開催からウェブ開催になったことに伴い、発表の辞退を希望する方がおられましたら、6月20日(土)までに、発表申込みを行った演題登録システムから発表を取り消してください。あわせて、発表辞退の旨を次のメールアドレス宛にご連絡ください。6月21日(日)以降の発表取り消しはできません。
   jera79@*****.jp

7.ラウンドテーブル

 会員の創意で自主的に企画される研究交流・意見交換の機会です。

(1)申込み方法

 開催希望の方は、下記大会ウェブサイトの申込みフォームに必要事項をすべて書き込んでください。受付開始は4月1日(水)で、締切は6月20日(土)です。申込みはすべてウェブサイト上で行います。お申込みいただきますと、自動的に受領確認メールがすぐに送信されます。確認メールが届かない場合は、下記メールアドレスにご連絡ください。
 申込み先ウェブサイト:https://********** (4月1日公開)
 メールアドレス:jera2020@h.kobe-u.ac.jp

(2)企画者・報告者等の資格

 企画者・報告者は、①本学会の会員で、6月20日以前に2019年度までの会費を納入済みの会員、または②6月20日までに2020年度の入会申込み手続きをとり、2020年度会費を前納した方、のいずれかに限ります。非会員が報告者(提案者)となることは可としますが、報告者(提案者)の半数は会員としてください。

(3)発表要旨(『発表要旨集録』の原稿)の提出

 企画を申し込んだ方は、ラウンドテーブルの「原稿作成要領」(大会ウェブサイトに掲出)にしたがって発表要旨(『発表要旨集録』の原稿:PDF2頁分)をWeb登録にてご提出(アップロード)ください。分量オーバーの場合、3頁目以降は掲載されませんので、ご注意ください。提出期間は6月26日(金)から7月17日(金)までです。締切厳守でお願いします。
 『発表要旨集録』に掲載された内容は、科学技術振興機構(JST)の研究情報データベース「J-STAGE」において公開されます。

(4)質疑応答のためのメールアドレス

 大会ホームページの発表申込時に登録していただいた発表申込者(研究代表者)のメールアドレス宛に、学会員から直接、質問・意見を送付していただく予定です。発表者が申込時とは別のメールアドレスで学会員からの質問・意見を受けることを希望する場合は、7月17日までに、次の宛先にご連絡ください。
   jera79@*****.jp

(5)発表申込みの取り消し

 すでに発表申込みを済まされた会員のなかで、集会開催からウェブ開催になったことに伴い、発表の辞退を希望する方がおられましたら、6月20日(土)までに、発表申込みを行った演題登録システムから発表を取り消してください。あわせて、発表辞退の旨を次のメールアドレス宛にご連絡ください。6月21日(日)以降の発表取り消しはできません。
   jera79@*****.jp

8.課題研究

 課題研究は2年間の継続となったため、次年度に向けてのステップとして本年は位置づけられました。したがって、Eメールによる質疑応答は予定されていません。

(1)課題研究Ⅰ 移民の社会統合における公教育の役割-排外主義に抵抗する包摂的な政策と実践を展望する-
Integration of Immigrants and the Role of Public Education:Envisioning Inclusive Policies and Practices against Xenophobia

 グローバル化を背景として加速化する移民・難民の増大は、国民国家内部の人種的・民族的多様性を増長させ、国民の文化的同質性を前提としたこれまでの公教育のありかたに変容を迫っている。移民・難民の子どもたちにとって公教育へのアクセスは、受け入れ社会において必要とされる言語、知識、スキルを獲得し、上昇移動を遂げる機会であり、その権利が保障されることが望ましい。しかし、現実をみるとOECDの調査報告書からも明らかなように、大半の先進諸国において、移民第一世代・第二世代の子どもたちはネイティブの子どもたちよりも学業成績が悪く、学校への帰属感も低いことが報告されている。先進諸国を席捲する新自由主義教育改革と排外主義のもとで、移民・難民の子どもたちが教育を通じたエンパワーメントの機会を享受することがますます困難になってきているのである。公教育が民主主義を理念とした平等化と統合の装置としてではなく、同化と排除の装置として機能してしまうことを、われわれはどのように捉え、どのように阻止することが可能であろうか。
 この課題研究では移民・難民を受け入れてきた先進国の事例に精通している研究者を招き、移民の社会統合を進めていく上で公教育が果たす役割について各国の現状と課題について報告していただく。欧米の移民先進国の事例は、今後移民の増加が予測される日本社会の公教育を考える上でも重要な示唆に富むだろう。移民・難民の子どもたちの差異を包摂し、すべての子どもにとって公正な教育機会を保障するためには、公教育のありかたをどのように再定義していったらよいのか。シティズンシップ教育や批判的多文化主義教育の議論も交えて、排外主義に対抗する教育のパラダイムを構築できればと思う。

(2)課題研究Ⅱ コミュニティ形成における多様なアクターの協同と教育の再検討

 人口減少時代において、これまで機能化されていた社会の諸システムを統合的に再構築する動きが加速している。中でも、コミュニティ形成と教育のあり方は今日の日本社会において重要な課題として広く認識されている。2014年の「まち・ひと・しごと創生法」の成立に伴い、地方創生基本方針が策定され、日本全国で様々なコミュニティ形成を目的とした教育的営みがみられる。また、大規模な自然災害が続く中、地域コミュニティにおける諸問題を解決する力の喪失など地域コミュニティをめぐる課題は深刻さを増し、コミュニティ形成のために多様なアクターが協同し、課題解決に取り組むことが求められている。しかしながら多様なアクターが協同することは、包摂と排除の関係性を常に問い直すことが求められ、新たな課題をも生み出している。
 そこで今回の課題研究では、コミュニティ形成過程において「異質なもの」を受け入れ、混じりあいながら新たな価値観を創り出すために教育学は何ができるかに着目したい。すでに、教育学、とりわけ社会教育、学校教育分野においては、様々なコミュニティ形成における実践事例報告や課題解決のための検討がなされているが、その見解や課題へのアプローチは多様であり、地域コミュニティに新たな価値観を創り出すために何ができるかについて、教育学全体での議論は十分になされていないように思う。そこで、本課題研究は、成功例だけでなく、対立や矛盾的契機をも含めた地域コミュニティの実像に即して、課題解決のために何ができるかについて、教育の根本的な価値や新たな可能性を問える議論を試みたい。

(3)課題研究Ⅲ 技術革新とエンハンスメントの時代における教育学の課題―「個別最適化された学び」は公教育に何をもたらすか―

 人工知能(AI)をはじめとする技術革新の進展により、人間と社会の未来像を描くことはこれまで以上に難しくなっている。また世界では、新しい技術を人間の能力増強(エンハンスメント)に用いることで、人間そのもののあり方が変容するとの見方も生まれてきている。一方日本においても、文部科学省(2019)「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」が掲げられ、種々の計測技術やAIを活用して「公正に個別最適化された学び」を推進しようとする政策が立案されている。こうしたあらたな技術によって「個別最適化された学び」が実現した場合、それは、人間の発達にとって、またそれを支える公教育にとってどのような意味をもっているのだろうか。教育学は、こうした問いに答えると同時に、今後教育学が果たすべき役割について再考すべき時期に来ている。
 そこでこの課題研究では、三つの問いを立て議論を試みる。第1に、こうした技術革新とその応用は、人間のあり方そのものにどのような変革を迫っているのか、である。とりわけ、脳と外部コンピュータを接続して人間の能力増強をはかるBMI(ブレーン・マシーン・インターフェイス)と呼ばれる技術が人間の「発達」という概念にもたらす影響を考えたい。第2は、こうした技術が浸透した時代において社会と人間との関係、とりわけ自律や信頼、責任といった概念にどのような変化が生じるのかということである。そして第3は、これら2つの変化によって公教育にどのような課題が生じるのか、また教育学のあらたな役割は何か、である。

9.公開シンポジウム

 公開シンポジウムについてはEメールによる質疑応答を検討しています。詳細は大会ホームページでお知らせします。

(1)公開シンポジウムⅠ 教師教育と教育学研究の新たな課題

 素朴な疑問から本シンポジウムを立ち上げたいと思う。素朴な疑問とは、本学会に集う多くの会員が日夜取り組んでいる教育学研究の営為と成果が、教師教育にどのように生かされているのかということである。教育学研究は教師教育にのみ奉仕する学問でないことは言うまでもないことであるが、会員の多くが勤務する大学は、教育学研究が行われる場であると同時にその成果を教育する場であり、そのことを通して教師になりゆく者を育てる場でもある。したがって、教師教育と教育学研究の関係は、本学会にとっては重要事であり、過去の学会大会や諸委員会の活動においても、『教育学研究』のバックナンバーを見ても、教師教育にまつわる類似のテーマを含めて繰り返し問われてきたところである。
 今回このテーマを取り上げる理由は、それが本学会にとって依然として重要なテーマであると考えるからにほかならないが、それだけではない。今このテーマをめぐって何が進行しており、どこへ向かおうとしているのかということを明らかにしたいという焦りにも似た思いがある。1980年代半ば以降今日まで、教育系大学・学部を中心に「開放制」のもとで教員資格を取得させているすべての大学・学部は大きな変動の波に翻弄されたが、現実には教師教育政策に対応するのが精一杯で、一つ一つの事態を何も総括しないままに現在に至っている。この一連の歴史的過程をしっかり総括する視点を欠いては教師教育と教育学研究の未来は展望できないはずである。例えば、教育系大学・学部の教育学研究科が教職大学院に模様替えされているが、その改革の行方はどう展望できるのだろうか。小学校教員養成事業に新規参入する私立大学は「教育学者なき教育学部」であるとの言説に接するが、実態はどうなっているのだろうか。教育学研究者を供給してきた旧制大学系大学院も大きく変化しているが、それは教師教育と教育学研究の関係をどのように変えていくのだろうか。
 本シンポジウムでは、このような具体的な話題を取り上げながら、今日の教師教育と教育学研究が置かれている状況を歴史的な視座から冷静に分析したい。登壇者は、高野和子氏(明治大学)、岩田康之氏(東京学芸大学)、大関達也氏(兵庫教育大学)の3氏である。

(2)公開シンポジウムⅡ  多国籍化する日本の社会と教育

 1970年代末以降、日本に居住することになった外国籍の人々は、それ以前に日本に居住していた在日韓国・朝鮮人や中国人(オールドカマー)との対比で一般にニューカマーと呼ばれ、グローバル化の進展とともに、その数を増やし続けている。彼らの存在は日本の産業や福祉の分野にも深く浸透し、今後の少子高齢化社会を想定すると、社会における彼らの役割は増大していくことが予想される。一方で、外国籍の子ども、あるいは国際結婚や帰化により日本国籍は有するが外国にルーツを持つ子どもを、家庭、学校、社会のなかでいかに養育し教育するかは、その重要性に鑑みると、制度的にも実践的にも十分な対応がなされているとは言えない。
 本シンポジウムでは、日本社会への同化や排除ではなく、ニューカマーもオールドカマーも含めた外国にルーツを持つ子どもたちと一緒に未来の平等で公正な社会を構築していくために、彼らを含むすべての子どもたちにどのような教育が提供されるべきかを、多面的に考えたい。その際、以下のような論点が想定されるであろう。ニューカマーの子どもを学校でどう受け入れ、何をどう教育するのか。幼小中高大の学校間連携や職業への接続はどうなっているのか。彼らの学習を学校外でどう支援するか。その際、オールドカマーへの教育の蓄積はどのように活かされるのか。外国にルーツを持つ子どもを含むすべての子どもが多様な人々と共に生きることをどのように学ぶべきか。そうした教育に携わる教員の養成や研修はどうあるべきか。さらには、行政による支援の現状と課題は何か。そして、非常にすそ野の広い当該分野を研究するために、どのような方法論と課題意識が求められるのか。
 こうした学校内外の広範囲にわたる問題を議論するために、シンポジストとして志水宏吉氏(大阪大学)、落合知子氏(神戸大学)、金光敏氏(「Minamiこども教室」代表)、仁ノ内智氏(神戸市教育委員会)の4氏に登壇いただく。加えて、吉富志津代氏(名古屋外国語大学)を指定討論者に招き、フロアを交えた議論の口火を切っていただく予定である。

10.若手交流会

 Zoom(遠隔会議システム)を用いて開催します。詳細は学会ホームページと大会ホームページでお知らせします。

11.懇親会

 開催しません。

12.大会校 企画 講演

Education Reform and Teacher Education
(教育改革と教師教育:教員養成の高度化と現職教員の継続的成長を架橋する大学の挑戦)
日時 2020年5月16日(土)15~17時に予定していましたが、延期とします。開催日時が決まりましたら学会ホームページと大会ホームページでお知らせします。
場所 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 A棟2階 大会議室
http://www.h.kobe-u.ac.jp/ja/access
講師 Dr Elaine Wilson(ケンブリッジ大学教育学部上級講師・教育学博士プログラムマネージャー・PGCE初等中等コース責任者、元中等化学教員、サルター化学教育賞受賞)

 ウィルソン博士は、ケンブリッジ大学教育学部を中心に、教育実践と研究を架橋し、成長し続ける教員の養成・育成に尽力してきた。同大学においては修士レベルの教員養成高度化はもちろんのこと、現職の校長を務めながら博士課程において学位を取得する者もいる。こうしたプログラムを通じて、教員が成長し続けるためのファクターとして研究を位置づけ、実現可能な制度設計を行ってきた。同時に、学校-大学パートナーシップモデルを打ち立て、高度な専門性を有する大学教員が現場に出向き、新任からベテランまでの継続的成長を支援するプログラム開発も担ってきた。これらの成果を生かし、カザフスタンにおいて、特に教授(teaching)に焦点をあて、教員個人としても学校単位でも実践・研究・成長が持続する教員養成・現職研修制度改革に貢献している。
 本企画では、以上の成果をふまえ、教育改革と教員養成に焦点をあて、特に大学教員の果たす役割について講演いただく。質疑応答を通じて、現代日本における教育改革と教員養成への示唆を得たい。
*申し込み不要/無料
*講演は英語で行われます。英日逐次通訳あり。