近畿地区理事会・大阪企画シンポジウム「教育学の〈ことば〉」のご案内(2023年2月18日、3月4日)

近代教育(学)は、人間の生と人間が生きる世界のものごとを、誤解や齟齬の生じにくい「わかりやすい」ものにして人びと(特に子どもたちに)提供することに力を尽くしてきました。しかしながら、他方ではまた、自然科学をはじめとする実証科学と親和的に発展・展開してきたがゆえに、近代教育(学)は、複雑で多様な人間の生と人間が生きる世界のものごとを実証科学的に説明可能なもの(すなわち、evidenceが示せるもの)に縮減し、そのようなevidence-based な知について教授/学習するための科学的・合理的な方法のマニュアル化を促進してきました。その結果の一つに、事例応用力やアナロジー的思考の衰弱化という問題が挙げられるのではないでしょうか。

事例やアナロジーは、可視化できないもの、一義的や明示的に語りえないものごとをさし示すことができます。見えないから、明瞭でないから、明示できないから存在しないわけではないものごと(例えば、ことばに尽くすことができなかった、誰かに対するあなたの思いなど)を、私たちは、事例やアナロジーを介することで他者と共有/分有することができるようになります。

今回、企画する2つのシンポジウムでは、可視化することのできないものごとや一義的に明示することができないものごとを語るための技法である事例やアナロジーの教育学的・人間形成論的意味と課題を、思想的および臨床的な観点から考えてみたいと思います。

シンポジウムⅠでは、1980年代~2000年代にかけて興隆した皇紀夫氏の臨床教育学(物語論)や鈴木晶子氏らの教育詩学と今日の教育(哲)学におけるレトリック論との対話を試みます。教育やそれに伴う諸概念―子ども、大人、教師、学校、そして人間など―を論じる際に、事例やアナロジーはいかなる意味をもち、いかなる作用を及ぼすと考えられてきたのか。これを振り返りつつ、教育学を思考するスタイル、語るスタイル(文体・語り様)の課題と可能性について議論します。

シンポジウムⅡでは、可視化することができないものごとや一義的に明示することができないものごとが充溢している人間の生の現実を、教育哲学のみならず、他の学問分野がいかに描き出し、論じようとしてきたのか/しているのか、を主題とします。

リーフレットPDFはこちらからご覧ください。

【シンポジウムⅠ レトリックとアナロジーの教育学的意味について】

2023年2月18日(土)14:00~17:00 オンライン開催

〇話題提供

西村拓生(立命館大学)

「言語論的転回から教育の公共的「語り直し」へ」

森祐亮(株式会社Open DNA、慶應義塾大学)

「アナロジー・理解・人間形成——G. ブック『学習と経験』第三部を中心に」

安喰勇平(神戸市外国語大学)

「教育・倫理・レトリック——教育学研究の実践性をめぐる試論として」

〇コメンテーター

室井麗子(岩手大学)

北詰裕子(青山学院大学)

〇司会

白銀夏樹(関西学院大学)

岡部美香(大阪大学)

 

シンポジウムⅠにご参加される方は、下記のURLから事前登録をお願いいたします。

https://zoom.us/j/92138043571?pwd=UVFSRklUMlFKc2JoVlhWR0FNT01kZz09

 

【シンポジウムⅡ 臨床的な学術研究とは】

2023年3月4日(土)14:00~17:00 オンライン開催

〇話題提供

大塚類(東京大学)

「複雑なできごとを複雑なまま描く試み:その難しさと可能性について考える」

奥井遼(同志社大学)

「わざ・臨床・パフォーマンス――人形劇の舞台の生きられた経験」

白川千尋(大阪大学)

「呪術を文化人類学的に理解する」

〇コメンテーター

杉田浩崇(広島大学)

〇司会

岡部美香(大阪大学)

 

シンポジウムシンポジウムⅡにご参加される方は、下記のURLから事前登録をお願いいたします。

https://zoom.us/j/95206331805?pwd=L2xZcUlkTytkd2FBV1BsR1U4TG41UT09

 

※問い合わせ先

シンポジウムⅠ・Ⅱいずれも、岡部美香(大阪大学・人間科学研究科 mioka@hus.osaka-u.ac.jp)までメールでお問い合わせください。